地方創生とメタバースが融合した新たな可能性を探る!今回の記事では、メタバース×地方創生の事例を「近畿・東海・北陸編」として7つに厳選してご紹介します。
地域の魅力をメタバース空間で発信し、観光やビジネスのチャンスを広げる事例から、婚活プロジェクトまで、多彩な取り組みをご紹介します。これらの事例を通して、地方創生とメタバースがどのように連携し、地域活性化に貢献できるのかを詳しく解説していきます。興味深い取り組みに触れ、地方創生に対する新たな視点を得てみませんか?ぜひ、最後までお付き合いください。
バーチャル大阪(大阪府大阪市)
大阪府とKDDIが共同で制作した、メタバース空間「バーチャル大阪」です。
大阪府と大阪市が共同で展開しています。
2025年に行われる「大阪・関西万博」に先駆け、大阪の都市の魅力を広く発信する目的で制作されました。
「“City of Emergence”(創発する都市)」をテーマとしており、大阪のあたらしい文化とコミュニティをつくる狙いがあります。
大阪のメタバース空間の再現性も非常に質が高く、たとえば「新市街エリア」では、道頓堀のグリコの看板がお目見え。
その他にも大阪城や梅田スカイビルなど、大阪ならではのランドマークを存分に堪能できます。
なお大阪府府知事の吉村 洋文さんは、「バーチャル大阪」について以下のようにコメントしています。
「バーチャル大阪は、みんなでつくりあげていく共創の場として進化し続けます。2月28日にオープンする新市街エリアで、新しい大阪の街の魅力に触れてみてください。」
プロジェクトの内容
・メタバース空間に大阪の空間を再現し、自由に観光を楽しめる
・バーチャル渋谷との往来が可能
目的
・大阪万博に向けた魅力アピール
・新しい文化やコミュニティの生成
ゴール
・大阪の魅力の認知および経済圏の拡大
プラットフォーム
・cluster
田舎の直送便(静岡県川根本町)
「田舎の直送便」は、メタバース空間に作られたサテライト販売所です。
「Vma dome」というプラットフォームが用いられ、生産者と直接会話ができたり、商品の販売を行うことができます。
実際に川根茶や柚子などの特産品、また地元食材をつかった商品が販売されています。
また、今後はこの他にも
- 南アルプスの大自然の特徴を生かした体験
- 鹿・蝶・鳥などをモチーフにした商品
- NFTを利用した新しい川根茶
本プロジェクトには、「過疎地における新しい魅力作りとしての想い」が込められています。
静岡県榛原郡川根本町は、人口減少による過疎化による影響から「静岡県の中でもっとも消滅の可能性が最も高い町」とされています。その現状を阻止するために、メタバースという最新技術と融合させることで「あたらしい魅力」をアピールすることが狙いです。
このメタバース空間の提供を手掛けたのは、Vma plus株式会社。グローバルD2Cの実現に向け、コンテンツ企画や運営を行っている企業です。
このVma plus株式会社は現在、メタバースによる地方創生プロジェクト「Vマ+街道」(Vマ+とは、バーチャルスペースマーケット(Vマ)に、すべてのモノを合わせる (+) 事ができる、と言う意味で名付けられた、仮想空間上で開催するイベント空間)を実施中です。
その第一弾として提供されているのが、今回ご紹介している「田舎の直送便」です。
プロジェクトの内容
・メタバース空間Vmadomeでの物品販売
・NFTを活用した川根茶の販売
目的
・過疎地における新しい魅力作り
・継続可能な地域経済を育てる
ゴール
・川根本町の過疎化を新しい魅力へと進化させる
プラットフォーム
・Vmadome
メタバースNFT美術館 入江泰吉写真展「古都奈良―春夏秋冬」(奈良県奈良市)
奈良県にある「入江泰吉奈良市写真美術館」が取り組むメタバースプロジェクトです。
奈良市との実証実験の一環として行われました。
日本を代表する写真家のひとり、入江泰吉氏の写真展「古都奈良―春夏秋冬」をメタバース空間で再現したものとなります。
プラットフォームにはDecentraland(ディセントラランド)が採用されました。
そのプラットフォーム上に「MANA Nara City Museum of Photography」という名前のメタバース美術館を設立。
そこには入江泰吉氏の作品の中でも、厳選された20点の作品が展示されています。
主催の入江泰吉奈良市写真美術館は、入江泰吉氏の全作品およそ8万点を収蔵。
それらの作品をデジタルアーカイブとして保存する取り組みを進めています。
なお、本プロジェクトの開催期間は2022年11月30日から2023年1月9日まで。
現在はすでに終了しています。
プロジェクトの内容
・入江泰吉氏の写真展をメタバース空間で再現
目的
・メタバース美術館ならではの3Dモデリング機能を活かし学生へ興味を促進すること
ゴール
・川根本町の過疎化を新しい魅力へと進化させる
プラットフォーム
・ディセントラランド
メタバース婚活イベント(山梨県北杜市)
「メタバース婚活イベント」は、メタバース空間で開催される婚活イベントです。
全国初の「自治体が主催するメタバース婚活イベント」として注目を集めました。
このイベントは山梨県北杜市が、隣町の長野県「富士見町」と「原村」の2市町村と連携して行われています。
この3市町村を合わせた地域をまとめて「八ヶ岳定住自立圏」として、人口減少を防ぐことが狙いです。
まず「メタバース婚活イベント」には、参加者がそれぞれ用意した「アバター」でログイン。
その後は空間内でオンラインで会話を楽しみ、お互いの同意のもとでマッチングが成立する流れです。
クリスマスには、マッチングした人どうしがメタバース内でデートを楽しめるような取り組みも行われました。
なお、プラットフォームは株式会社ガイアリンクが運営する「GAIA TOWN」です。
プロジェクトの内容
・メタバース空間に婚活イベント会場を設置・マッチングした人同士メタバース上でデートを楽しめる
目的
・八ヶ岳定住自立圏の人口減少を防ぐ
ゴール
・八ヶ岳定住自立圏の認知度拡大および地域活性化
プラットフォーム
・GAIATOWN
バーチャルやぶ(兵庫県養父市)
「バーチャルやぶ」は、兵庫県養父市が吉本興業と共同で運営しているメタバース空間です。
「地域の魅力をエンタメの力で盛り上げ、地方創生につなげること」を目的に、2022年6月27日(月)に制作されました。
養父市の観光名所を自由に見て回れるのはもちろん、「明延鉱山坑道跡での採掘ゲーム」をはじめとするコンテンツが盛りだくさんです。
養父市を知らない方が初めて来場しても楽しめる仕組みが満載です。
また大きな特徴として、定期的なイベントの開催などの積極性が挙げられます。
直近では
- 観光案内所オープン
- バーチャルツアーガイド開始
- 期間限定のスキー場オープン
- 吉本興業の芸人によるお笑いイベント開催
バーチャルやぶは、仮想の市庁舎で「デジタル住民票」を発行し、多くの人が訪れる「100万人都市」を目指しています。
採用しているプラットフォームは「VRChat」です。
専用のゴーグルやコントローラーが不要で、スマホでアプリをインストールするだけでアクセスが可能です。
プロジェクトの内容
・メタバース上で養父市の観光名所を楽しめる
・コンテンツやイベントに自由に参加が可能
目的
・地域の魅力をエンタメの力で盛り上げ地方創生につなげる
ゴール
・仮想の市庁舎でデジタル住民票を発行し100万人都市を目指す
プラットフォーム
・VRChat
桑名水郷花火大会メタバース共同イベント(三重県桑名市)
「桑名水郷花火大会メタバース共同イベント」は、三重県桑名市が主催するメタバースイベントです。
毎年夏、三重県桑名市で開催される「桑名水郷花火大会」。
長年引き継がれている伝統行事ですが、2020〜2021年の2年間、新型コロナウイルスの影響で中止となりました。
そして2022年、2年ぶりに開催されることを機に「伝統行事として開催してきた桑名市水郷花火大会の迫力と感動を全国に届けたい」という想いのもと実施されました。
当イベントは、Webブラウザ上に作られたメタバース空間で行われます。
そのためPC・スマホ・タブレットなど、デバイスを問わずアクセスできる点がポイントです。
参加料は無料で、さらに来場者には後日記念のNFTがプレゼントされるなど、盛りだくさんの内容です。
プラットフォームは、
- Metafronteir(メタフロンティア)株式会社
- 株式会社Meta Heroes(メタヒーローズ)
本プロジェクトには、上記の2社も「共催」という形で参加しています。
プロジェクトの内容
・桑名水郷花火大会をメタバース空間で開催
・来場者に限定記念NFTをプレゼント
目的
・桑名市水郷花火大会の迫力と感動を全国に届ける
ゴール
・三重県桑名市の認知度拡大および地方創生
プラットフォーム
・MetaEARTH
バーチャル瀬戸(愛知県瀬戸市)
「バーチャル瀬戸」は、愛知県瀬戸市が運営を行うメタバース空間です。
2022年11月時点で、県内初の「自治体によるメタバース導入」ということもあり注目を集めました。
メタバース空間上に瀬戸市の街並みが再現されており、
- 商店街
- オフィスビル
- 瀬戸蔵
- 深川神社
- 窯垣の小径(かまがきのこみち)
またアバター同士で自由に会話を行うことも可能。
また2023年2月にはバレンタインイベントとして「バレンタインウィーク2023」が開催されるなど、飽きずに利用できる取り組みにも積極的です。
愛知県瀬戸市は2022年4月、CG制作会社「スピード」へ、645万円で「バーチャル瀬戸」の制作を依頼。
おおよそ7ヶ月の期間を経て、同年11月に正式にリリースされました。
制作の背景には「現実の経済や観光の振興に役立てたい」という市の想いがあります。
また当プロジェクトには、被写体をあらゆる角度から撮影して3D画像を生成する「フォトグラメトリー」という技術が用いられてることも特徴です。
プロジェクトの内容
・メタバース空間上に設立された瀬戸市で自由な散策やコミュニケーションを楽しめる
・来場者には限定記念NFTをプレゼント
目的
・現実の経済振興に役立てる
ゴール
・愛知県瀬戸市の認知拡大
プラットフォーム
・cluster
まとめ
以上、近畿・東海・北陸の「メタバースで地方創生を図る県」を、具体的な取り組みを混じえてご紹介しました。
地元の魅力を訴求するものや関西らしさ溢れるもの、また意外性のあるものまで、その取り組みは自治体によって多種多様です。
自治体がメタバースを作るメリットは、地方創生・地域活性化はもちろん、
- 国内全体のメタバースの発展への貢献
- インターネットにおけるコミュニティ活動への貢献
などに、大きな影響を及ぼすことができる点といえるでしょう。
ただ現代の自治体メタバースは、全体的に「エンタメ要素」がメイン。
さらにメタバースは、高額な専用ゴーグルやコントローラーが必要だったりと「庶民には遠い存在」なのも否めません。
そのため各自治体が「より身近かつ、ないと困るコンテンツ」の制作を目指すことで、よりたくさんの人に注目されるきっかけとなるでしょう。
今後はさらに、メタバースの活用に踏み切る自治体が増えることが予想されます。
各自治体がメタバースをどう活用し、どんなアイデアで展開していくのか、今後も目が離せません。