この記事では具体的なReFiプロジェクトを3つ紹介します。地方創生と親和性の高い「ReFi」という概念をより深く理解するきっかけとなれば幸いです。
ReFiとは?
そもそも「ReFi」とは何なのかという話ですが、ReFiとは「Regenerative Finance」の略で、日本語訳すると「再生金融」と呼ばれます。これはブロックチェーンを活用して環境問題や社会問題を解決しようとする取り組みを指します。
より詳細のReFiの解説や、ReFiがどのように地方創生を絡んでくるのか、親和性があるのかに関してはこちらの記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
地方創生×ReFiの可能性を考える | localweb3
具体的な事例3選
では早速事例の紹介に入っていきます。
①Nori
概要
Noriは、カーボンクレジットの売買をNFTを活用して行うことを目的としたマーケットプレイスです。
カーボンクレジットとは二酸化炭素の削減証明のようなものです。現在、世界的に脱炭素社会(カーボンニュートラル社会)の実現へ向けた動きが加速している中で、各企業は二酸化炭素の排出を削減する必要性に駆られています。
しかし、今までの企業活動を急に変更することは難しいため、排出してしまった二酸化炭素分のカーボンクレジットを購入することで差し引きゼロにするというカーボンオフセットの考え方が浸透しつつあります。
その際、企業はカーボンクレジットを購入しますが、このカーボンクレジット業界には多様な課題が存在しています。例えば、クレジットの信頼性、低い流動性などが挙げられます。
Noriはこれらの課題解決をブロックチェーンによって行っています。カーボンクレジットをトークン化してブロックチェーンに載せることで、透明性・改ざん不可能性・流動性の向上を実現し、安心で安全な取引を実現します。
Noriでは主に世界各地の農場経営者や農家の方が出品者となりカーボンクレジットを出品し、気候変動やカーボンオフセットに関心の高い企業がクレジットを購入します。Shopify等のグローバル企業もすでに顧客となっており、Noriを通してカーボンクレジットを購入しています。
また、Noriにはサブスク機能もついており、毎月決められたカーボンクレジットを定期購入する仕組みがあります。この仕組みにより、出品者はより安定した収入を得ることができ、カーボンクレジットを出品するインセンティブが高まります。
https://nori.com/subscriptions
ブロックチェーンの活用状況
NoriはPolygon上に構築されています。また、炭素クレジットとして「NRT」と呼ばれる独自NFTを発行・販売しています。
NRTは「今後10年間に渡り、二酸化炭素を1トン分除去することができる」ことを1単位として発行されるNFTです。すでにNori上では12.5万トンを超えるのカーボンクレジットが売買されています。
出典:https://nori.com/remove-carbon
Noriはマーケットプレイスとして販売事業者と購入事業者の中間となっており、取引手数料として15%が支払われるビジネスモデルとなっています。
展望
Noriは2023年6月に625万ドル(約8億7,000万円)の資金調達を行い、取引所のベテランであるMatt Trudeauを新CEOに任命したことを発表しました。
また、NRTの購入やNoriのガバナンストークンとしても機能する独自トークンの発行も視野に入れているとのことです。
今後のカーボンクレジット業界の成長と共に益々大きくなっていくことが予想されます。
②MORI NFT
概要
MORI NFTは、森林の二酸化炭素吸収量向上を目指すNFTプロジェクトです。
実際の森林に基づいたNFTを発行・販売し、その保有者に実際に削減されたCO2と対応するトークンがエアドロップされます。
2023年3月に第一弾の取り組みとして、広島県庄原市にある森林と紐づいた「MORI NFT」の販売が行われ、約30個のNFTは完売しました。
運営会社は森林整備事業に関するプロジェクトのアレンジャーとして林業に関わる各種事業開発・マネジメントを行う”JE FOREST株式会社”です。独自の伐採従事者データベースから最適な人材配置、ドローンや最新の重機を活用し、超高効率で測量、伐採、搬送、植林のサイクルを回転させることで事業性・収益性の最適化を果たしています。
ブロックチェーンの活用状況
MORI NFTはイーサリアム上で発行されています。
また、実際の森林に基づいたNFT「MORI NFT」とその後削減されたCO2と対応するトークン(NFT)「i Green NFT」の2種類が存在しています。
最初に販売されるNFTが「MORI NFT」で、このNFTはプロジェクト毎に販売されます。その販売益の一部は実際の事業者に寄付され、カーボンクレジット販売のための活動の資金に充てられます。そしてその後、実際にCO2の削減に成功しカーボンクレジットを生成できた後に、削減されたCO2と対応する「i Green NFT」が該当プロジェクトのMORI NFTホルダーに自動でエアドロップされます。1つのiGreen当たりで約1kgのCO2吸収量に相当します。
出典:https://mori-project.gitbook.io/mori-nft/2-intorodakushon/morino
カーボンクレジットの販売にはプロジェクト開始から半年から数年単位で時間がかかります。基本はその間は売上がなく費用だけがかかる状態です。MORI NFTとi Green NFTと2種類のNFTに分けることで、プロジェクト開始時に資金調達を行うことができ、実際のプロジェクト運営にその費用を当てることができます。また、せっかく作成したカーボンクレジットのNFTが売れ残るというリスクも極限まで下げることができます。
2023年3月には広島県庄原市にある森林と紐づいたMORI NFTが第一弾NFTとしてリリースされ、見事完売しました。
https://twitter.com/MORI__NFT/status/1635601049859002369?s=20
展望
今後はMORIを保有するインセンティブ向上のための施策や、MORI NFTをメタバースと連携させることでより価値を持たせる案が検討されています。
また、対応場所を増やしていくことでNFTの発行数の増加やマーケットプレイスの設立もロードマップに記載されていました。将来的にはDAO化も検討されており、完全に分散化したプロトコルとなることを目指しています。
③SolarFarmAccess
出典:https://www.solarfarmaccess.xyz/
概要
SolarFarmAccess (SFA) は、太陽エネルギーとブロックチェーン技術を組み合わせたNFTプロジェクトです。
販売するNFTコレクションの収益は実際の太陽光発電の建設に寄付されます。すでに2つの太陽光発電所の開発が始まっており、一箇所目が米国コロラド州にある1MWのオングリッド太陽光発電所で、二箇所目が米国イリノイ州にある500kWのオフグリッド太陽光発電所となります。
太陽光発電所の電力は暗号資産のマイニングや地域社会に販売しています。マイニングによって得られた暗号資産はDAOに保存され、NFTホルダーの投票によって利用されます。
ブロックチェーン活用状況
SFAでは2種類のNFTが販売されています。
- SolarPass NFT
- SolarHeads NFT(PFP)
「SolarPass」はユーティリティに焦点を当てており、「SolarHeads」はコミュニティに焦点を当てています。
5,000個のSolarPass NFTホルダーはSFAのすべてのユーティリティに完全にアクセスできます。ユーティリティには、ステーキング、EV充電、製品やサービスの割引、太陽エネルギー プロジェクトに直接投資する機能が含まれます。
5,555個のSolarHead NFTはコミュニティの成長と発展に焦点を当てており、コミュニティへの参加や関連NFTのAL配布やエアドロップなどが得られます。
SolarPassは10ETH、SolarHeadは0.1ETHで一般販売され、2023年7月時点でSolarPass NFTは144個、SolarHead NFTは976個販売されています。
展望
長期的には土壌再生系のプロジェクトやEVの充電施設の開設なども視野に入れられています。
そして、現実世界とデジタルが融合し、ブロックチェーンを活用して多くの社会課題の解決が行われるエコシステムの構築を目指しています。
ReFiの課題と未来
以上、具体的なプロジェクトを3つ紹介させていただきました。
カーボンクレジットや太陽光発電との連携など、基本的にReFiプロジェクトは現実世界の何かと連動しています。そもそものコンセプトが社会課題をブロックチェーンで解決するというものなので、現実の何かをトークン化したり、ブロックチェーンでインセンティブ設計を行うことで、きちんとマネタイズしつつ、関わるステークホルダー全員が損しない形で、社会課題が解決できるモデルを構築しています。
↓現実世界の資産と連動するRWAの説明記事
地方創生×RWAの可能性を考察する | localweb3
上記の記事でも説明し、ReFi系のプロジェクトの課題としても挙げられますが、現実世界の資産をトークンにブリッジする際にいかにトラストレスで行うか、どれだけリアルタイムでリンクさせ続けられるか、この辺りはまだ技術に未成熟な部分が多く、運営会社への信頼で成り立っている部分も多いです。
また、ReFi自体の認知度が低く、まだまだ一般層には広がっていませんが、世界的に見てサステナブルやSDGsの波が広がっていくことは間違い無いので、ReFiの存在感も急速に伸びていくことが見込まれています。
web3のマスアダプションを果たすと同時に、ReFi自体も一般層へ広がり、社会課題の解決が非営利活動ではなく、営利活動として行える時代が近づいてきています。
自分自身もReFiでプロジェクトを立ち上げたりと、この領域には非常に興味があるのでこれからも注目して追いかけていきます!